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元院生が研究過程で収集した資料の貯金箱。
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国税徴収法第24条第6項の規定は、その譲渡担保の目的債権が国税の法定納期限後に発生したものであっても適用があるとされた事例。

(事案の概要)
関係者は、上告人X、Xに対する債務者B、担保提供者A、Aの取引先C。

H9/3/31 Xは、Bの債権について、Aに担保提供を求めた。XとAは、その時点で有していたCの売掛金債権、及びその後1年間分のCの売掛金債権について、債権譲渡担保契約を締結。
H9/6/5 Bの貸倒れに伴い、Cに対し、上記契約を内容証明郵便にて通知。
H9/9/30 Aの国税に係る法定納期限が到来。
H10/4/3 国税の滞納処分として、H10/3/11~3/30の取引に係るC売掛金債権を差押え。

将来発生する債権について譲渡担保契約を締結している場合において、国税の法定納期限後に発生した債権は、課税庁と担保権者のどちらに優先権があるか。

第一審 課税庁敗訴

控訴審 平成15(行コ)133 平成16年7月21日 東京高裁 (課税庁 勝訴)
「滞納者の滞納国税の法定納期限等が到来した後に発生した債権については、…その発生時に譲渡担保財産となったものと解すべきである。…本件債権は,本件国税の法定納期限等が到来した後に発生したものであって、本件国税の法定納期限等以前に譲渡担保財産となっていたものではないから、…本件差押えに違法はない。」

上告審 平成16(行ヒ)310 平成19年2月15日 最高裁第一小法廷 (破棄自判 課税庁敗訴)

(1)将来発生すべき債権を目的とする債権譲渡契約は、譲渡の目的とされる債権が特定されている限り、原則として有効なものである(最高裁平成9年(オ)第219号同11年1月29日第三小法廷判決・民集53巻1号151頁参照)。
また、将来発生すべき債権を目的とする譲渡担保契約が締結された場合には、債権譲渡の効果の発生を留保する特段の付款のない限り、譲渡担保の目的とされた債権は譲渡担保契約によって譲渡担保設定者から譲渡担保権者に確定的に譲渡されているのであり、この場合において、譲渡担保の目的とされた債権が将来発生したときには、譲渡担保権者は、譲渡担保設定者の特段の行為を要することなく当然に、当該債権を担保の目的で取得することができるものである。そして、前記の場合において、譲渡担保契約に係る債権の譲渡については、指名債権譲渡の対抗要件(民法467条2項)の方法により第三者に対する対抗要件を具備することができるのである(最高裁平成12年(受)第194号同13年11月22日第一小法廷判決・民集55巻6号1056頁参照)。
以上のような将来発生すべき債権に係る譲渡担保権者の法的地位にかんがみれば,国税徴収法24条6項の解釈においては,国税の法定納期限等以前に,将来発生すべき債権を目的として,債権譲渡の効果の発生を留保する特段の付款のない譲渡担保契約が締結され,その債権譲渡につき第三者に対する対抗要件が具備されていた場合には,譲渡担保の目的とされた債権が国税の法定納期限等の到来後に発生したとしても,当該債権は「国税の法定納期限等以前に譲渡担保財産となっている」ものに該当すると解するのが相当である。

(2) 前記事実関係によれば,本件契約においては,約定の担保権実行の事由が生じたことに基づき,上告人がC社に対して担保権実行の通知をするまでは,A社がその計算においてC社から本件目的債権につき弁済を受けることができるものとされていたというのであるが,これをもって,本件契約による債権譲渡の効果の発
生を留保する付款であると解することはできない(前掲平成13年11月22日第一小法廷判決参照)。
そして,前記事実関係によれば,上告人は,…本件差押えに先立ち,本件債権が本件国税の法定納期限等以前に譲渡担保財産となっている事実を内容証明郵便によって証明したものということができるから,本件について国税徴収法24条1項の規定を適用することはできないというべきである。
そうすると,被上告人が同条3項の規定に基づき上告人を第二次納税義務者とみなして行った本件差押えは違法というべきである。


(リンク)

タビスランド判例速報

(感想)

元々の保証債務は法定納期限前に現存している訳ですから、国民感情にも合致する妥当な判決だと思います。
不勉強なので自信はありませんが、国税徴収法16条による抵当権の優先権(ただし18条により差押え等の通知時における債権額を限度とする)が根抵当権であって、その担保債権が法定納期限後に発生したとしても有効であるなら、最高裁の判決は抵当権とも整合すると思います。
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