忍者ブログ
元院生が研究過程で収集した資料の貯金箱。
[55] [54] [53] [52] [51] [50] [49] [48] [47] [46] [45]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ここでは、各学者の評釈を集めて、それぞれの考え方を紹介したいと思います。
(5月11日加筆)



前野悦夫(税理士)、山下学(立正大学法学部教授)  (税務弘報 2006年11月号より、裁決に対する評釈)
(1)年金が所法9条1項15号規定の「相続により取得するもの」に該当しないことについて、明確に法的な判断基準を示していない、(2)受け取り方の違いで課税非課税が異なるのは租税公平主義に反する、として、裁決に批判的(判決支持と思われる)である。
その上で、10年間の年金払いによる利息相当額には課税されるべきであるとしている。

池本征男(税理士、中央大学兼任講師) (国税速報 2006年12月18日号より、地裁判決の評釈)
相続により継続受取人に支給される退職年金を挙げ、この年金は、「所得税の課税所得を構成することを前提に、所得税法9条1項3号ロ(死亡した者の勤務に基づいて支給される遺族年金)の規定により非課税所得とされており、同条項15号の規定に基づいて非課税所得とされているのではない。」として、保険の年金は非課税規定がないことを指摘。しかし、一時金と年金の第1回目を同時に取得しておきながら、年金部分のみに課税される明快な理由が見出せないとして、判決を支持。また、「実現した所得」の解釈について、受給権相当額を上回る部分が雑所得になるという考え方をとりあげ、「このような計算は、所得税法施行令183条の文理解釈上の難点があろうが、この考えに類似した裁決例もないわけではない」として、相続後の運用益の課税のみを容認している。

三木義一(立命館大学法学部教授) (税理 2007年2月号より、地裁判決の評釈)
所得税法59条との関係を挙げ、「59条の対象になっていたのは譲渡所得時の基因となる資産であるので、本件年金受給権がまず被相続人に帰属し、相続により譲渡されたと擬制できなければならない。しかし、本件年金は受取人が相続人に指定されているので、相続人の固有財産になり、相続による譲渡を擬制することができないので、被相続人の所得課税の繰延べとして合理化することはできないことになろう。」と判決を支持
また、特許権の相続の場合を挙げ、「本件判決の射程距離には入らないと解しておきたい。」とあいまいな表現をされている。(→特許権の相続については、別に規定を研究する余地あり)

小林柏弘(税理士)(判決批判)vs.小池正明(税理士)(判決支持) (速報税理 2007年2月11日号、同21日号より、地裁判決の評釈)
小林先生は、本来生命保険金の一時金が課税されていないところに問題がある、と、この問題の本質を看破されておられる。その上で、公平性に問題はあるものの課税はやむを得ない、と課税庁の立場を支持。
小池先生は、失礼ながら小林先生の言わんとする「創出された利益」「移転による利益」の違いを理解しておられないのではないか。この点、小林先生も「別ものだ」で終わってしまい、その違いを理解させることに成功していないため、意見が堂々巡りになってしまっている。2号で15ページにもなる対論なのにもったいない。。。

品川芳宣(筑波大学名誉教授) (税研 2007年3月号より、地裁判決の評釈)
相続財産を譲渡した場合を例に挙げ、相続税において資産の時価が課税対象となり、譲渡時に被相続人の所有期間に係るキャピタルゲイン部分について課税されるのは重複課税だと言っている(二重課税という意味で使っている訳ではないようだ)。しかしこれについては所法60条の明文規定があるが、本件年金課税については明文規定が存在しないと言っている(所令183条は理由にならないと排除している?)

(以下、5月11日加筆)

松岡章夫(税理士・早稲田大学大学院会計研究科講師) (税理 2007年3月号より、地裁判決評釈)
譲渡所得の基因となる資産は所法60条により繰り延べられるが、その他の所得(配当、預貯金利子、事業用売掛金、印税収入)については、被相続人の所有に係る期間の所得税が相続税評価額から控除されること、また、退職手当金の年金受給が非課税なのは所法9①三により手当てされているからであることを指摘した上で、「私は、被相続人が生前にその所得が実現していたのであれば所得税が課税されていたことになるものは、相続人の所得として所得税が課税されるべきではないかと考える。そう考えないと、所得課税の漏れが生じてしまうことになるからである。」との基本的な考え方を示している。そして、所法9①三により退職年金の非課税を明文化していることの比較から、「現行課税実務(所得税が課税される。)のほうが整合性がとれているのではないか」としている。(課税庁支持と思われる。)

木島裕子(税理士) (税理 2007年3月号より、地裁判決評釈)
判決を支持し、その理由として次の3点を挙げておられる。
①「みなし相続財産の趣旨が、法律上の相続財産と実質的に同一のものとしている点からすれば、これを受給権に限定する理由は少なく、むしろ実際に相続人が受けた経済的利益により評価する方が合理的である」。
②年金受給権と支分権が民法上異なるものといっても、これだけでは両者の違いが明白になっているとは言えず、二重課税とならない根拠は乏しい。
③年金総額の代替一時金に課税しないとの取扱い(所基通9-18)は一時金との課税の公平を保つためと言われているが、支給形態の違いによる課税の有無について課税上の公平を欠くのではないか。
そのほか、上記前野評釈について、「剰余金・配当金のような果実は、生命保険契約に基づき保険金受取人が固有の権利として受け取るものであって、その経済的実質は保険金と変わらない」「年金受給権の評価は…取得時の現価に引き直したものであることからすれば、果実も含めて非課税所得と解するのが合理的と考える」としている。

橋本守次(税理士) (税務弘報 2007年5月号より、地裁判決評釈)
判旨を批判。譲渡所得計算が被相続人の所有に係る部分も合せて課税される点を挙げ、「現行相続税は、所得税と別個の税体系であるといわざるを得ないのである。それは、相続財産に相続税を課したとしても、その財産に生じていたキャピタル・ゲインは清算されたときは(ママ)考えないことによるものである。」とし、カナダの例を挙げ「被相続人のキャピタルゲインは必ずしも相続人段階まで課税を繰り延べるべきものでもない」としている(意味不明)。シャウプ税制をとりあげ、税構造が二重課税と考えていないことを紹介した点はうなずける。また、被保険者が負担した保険料を控除している点が判決において検討されていないことを指摘。
さらに、年金受給権と支分権の違いは、課税上の考え方においても異なることを指摘し、木島評釈を批判、松岡評釈を支持。
PR

コメント
論文について
はじめまして、私のブログにコメントいただきまして、ありがとうございます。
私が見た論文は、月刊税理3月号の松岡章夫先生の論文です。ただ、あとで読み返して見ますと、私の解釈が誤っているところもありましたので、私のブログは無視していただいて、原文をご覧いただいた方がよろしいかと思います。
【2007/05/07 10:29】 NAME[yodel] WEBLINK[URL] EDIT[]


コメントフォーム
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード
  Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字


トラックバック
この記事にトラックバックする:


忍者ブログ [PR]
ブログ内検索
最新TB
最新CM
[09/26 jade]
[05/05 中野達夫]
[01/03 んー]
[12/31 Coolhage]
[11/15 んー]
プロフィール
HN:
Coolhage
性別:
非公開
職業:
元大学院生
自己紹介:
資産税が中心になると思います。

記事内容は随時加筆・訂正しますので、投稿日はあてになりません。

まだまだ勉強中の身で、自分の主張も180度変えたりします。ご批判をいただければ幸いです。
アクセス解析
カウンター