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元院生が研究過程で収集した資料の貯金箱。
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死亡した日より後に支給された生存月に係る国民年金等は、相続財産ではないから相続税の課税財産ではなく、それを取得した遺族に対して一時所得が課されることが確認された事例。

控訴審 平成1(ネ)199 平成3年6月26日 札幌高裁

上告審 平成3(行ツ)212 平成7年11月7日 最高裁第三小法廷 行集49巻9号1829頁

これは租税裁判とは言えませんが、未収年金が相続財産ではないという判断をした点で、租税に影響を与える裁判です。

実際、この判例に基づき、公務員であった被相続人の未支給共済年金(多くても2か月分)が、相続財産ではないとして税務署から減額更正を受けた例を知っています。



国民年金等については、原則として生存期間中に支払われるものであり、被相続人の死亡後において支払われるものであってもそれは生存期間中に係る部分である。そのため、通常の「未収金」同様、相続財産を構成し、相続税の課税対象になると思っていました。

ところが、死亡後の未収年金を請求できるのは「相続人」ではありません。

年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給しなかつたものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であつて、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができる。(国民年金法第19条1項

判決によれば、この規定は、「相続とは別の立場から一定の遺族に対して未支給の年金給付の支給を認めたものであり、死亡した受給権者が有していた右年金給付に係る請求権が同条の規定を離れて別途相続の対象となるものでないことは明らかである。」

私の解釈するところでは、つまり、年金受給権は一身専属のものであり、未支給部分については遺族が請求できるものの、それは受給権を相続したからではなく、遺族固有の権利によるものだからである、と。

死亡保険金と同様、遺族の固有の権利であるから、相続財産ではなく、また、死亡保険金のように相続税のみなし規定の対象でもないから、相続税は課税されない。しかし、所得は発生しているのだから、一時所得が課税される、と、こういう論理なわけです。(相続により取得したものではないので、非課税所得(所法9条1項15号)には該当しない。)


一見、なるほどとも思いますが、感覚的には釈然としません。

税負担の観点からは、一時所得であれば50万円控除後の半分にしか課税されないわけですから、他に一時所得がなければほとんどの人は所得税すら課税されないので、財産家ほど有利となります。一方、相続税がかかるほどの相続財産がなくても、たまたま他に一時所得となるものがあれば、所得税が課税されるということになります。例えば、被相続人を被保険者とする生命保険の保険料を相続人自らが負担していた場合などがこれに該当します。

《参考文献》
週刊税務通信 No.2974 平成19年7月2日

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