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元院生が研究過程で収集した資料の貯金箱。
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川端康之「最近の最高裁租税判例について」『月刊国際税務[Vol.26 No.9]』(2006.9)P.43-51

1.「オウブンシャ・ホールディング事件について」

 …株式価値の希釈化を22条2項に当たるものと構成するには、以下の吟味すべき事項が不足しているのではないか。
① 希釈化された株式は親会社が引き続き保有し続け、未実現であったこと
② 22条2項と資本等取引との関係
③ 第三者の行為による希釈化の範囲(当事者が"通じて行う"ことの基準)
④ 22条2項と新旧資産の取得価額との関係
⑤ 外国子会社の外国法上の行為の日本法上の性質決定等
 …外国法人の行為について設立地法に言及することなく、増資決議・新株発行・希釈化など、本件の重要な事実間関係について法的評価を行うことには無理があると思われる。

2.映画フィルム・リース組合事件

 …最高裁は、「原審大阪高裁が、本件取引が租税回避を目的とし、実質的に映画に関する所有権その他の権利を真実取得したものではない(契約書上、そのような形式や文言が用いられたに過ぎない)と、映画フィルムの取得自体を私法上疑問視しているのに比較すると、むしろ、私法上は組合の成立も映画フィルムの取得も肯定しつつも(肯定するからこそ、組合には実質的に使用収益権が残されていない点を指摘し得る)、そのような取引から生ずる危険を負担せず、また、当事者が映画の配給事業には知識や経験もなく積極的に関与していないことの二点を重視した理論構成であろう。」
「その意味では、最高裁判所が、危険を負担しない取引から生ずる費用の経費算入を制限し(at risk rule)、また、受動的活動によって生じた費用の経費算入を制限する(passive activity loss limitation)、という解釈を示した事例として位置づけられるべきではないか」
しかし「これら二件の理論の根拠付け、両者の相互関係については全く言及しておらず」「両者の理由付けを中間命題として用い、経費算入制限の根拠を『事業の用に供する』という法人税法31条1項の法律要件の充足に求めている」。
類似の航空機リースの事案(名古屋地裁判決)で納税者が勝訴した。「事実認定について課税上の配慮を主な要素として納税者の主張する私法法律関係ではない法律関係を認定することには、最高裁判所は商況区であると解せよう。」
cf. H17年度改正 措置法27条の2(at risk rule)、同41条の4の2(PAL)

3.外国税額控除余裕枠利用事件

「注目すべきは、政策的減免措置であるから限定的に解釈すべきであるという論旨ではなく、制度趣旨を措定した上でそれから外れるような適用はする必要がないと見ることができるような『趣旨目的から著しく逸脱する態様で利用して納税を免れ』ることを濫用であるとしていること(…)、税負担の公平を害するものであること(…)により、外国勢を外国税額控除の対象とすることはできないとしていることである。」
「一見、事業目的の存否という一義的な基準であるかのように見えても、…評価が分かれることからすれば、限定解釈の基準として事業目的の基準を適用することは事実関係の微妙な評価が伴う」

4.これらの事案を通観して

① 事業目的の存否を根拠として納税者の立場を疑問視することには、最高裁は消極的であるようだ。

② 外国税額控除余裕枠利用事件で適用された「法の濫用」が、一般化され得る法律構成であるなら、オウブンシャ・ホールディング事件においても「特定現物出資規定の濫用」という法律構成をとるべきであったのではないか。特定現物出資規定こそ、明らかに課税減免規定(正確には繰延規定)だからである。

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