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元院生が研究過程で収集した資料の貯金箱。
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(概要)

 

個人Aは、昭和33年11月27日に鶴屋百貨店に土地を30,552,000円で売却し、所有権移転登記をした後、翌28日に死亡した。

Aの相続人は、売買契約の当日受け取った代金は手付金100万円に過ぎず、残額は月々50万円の延払契約であるため、割賦販売基準を採用すべきとして裁判に及んだ。



第一審(高裁判例より)

譲渡所得の本質について
 資産の譲渡に伴なう所得に対する課税は、主として純資産増加説に立脚し、資産の客観的な値上りを所得と観念し、課税を行なうことにしている。もつとも、厳格な純資産増加説に従えば、納税者の資産の値上りは毎年これを査定して課税すべきこととなるが、これは把握することが困難であるので、かような所得(資産の値上
り)は、納税者がその資産を現金等に換金する等譲渡したときに、課税することとしているのである。すなわち、課税の対象としている資産の譲渡所得は、資産を売却し代金を受領することによつて初めて実在化するものではなく、譲渡所得の基因であるものは資産の値上りという形で既に発生しているのであり、この考え方を前
提として、その資産が売買であれ贈与であれ譲渡された時点を課税適期として、資産の値上りを計算し課税することにしているのである。資産の譲渡に伴なう課税の根拠をこのように理解すべきことは、資産の贈与や低廉譲渡の場合について、その贈与者や譲渡人が対価を受領することがないにもかかわらず、同様に同人等が資産の譲渡に伴なう納税義務を負担しなければならないと規定されていること(所得税法(昭和22年法律第27号をいう。以下同じ。)第5条の2第1項、第2項)および譲渡所得について譲渡を契機として一時に課税することは税負担の一時的な過重をきたすので、譲渡代金から15万円の特別控除を行なつた上で、その残額の10分の5に相当する金額をもつて課税標準としていること(同法第9条第1項)等に照らして明らかであろう。

譲渡所得の帰属年度について
 譲渡所得をどの年度に帰属させるかについては、譲渡とはいかなる時点を捉えていうものであるかについて明瞭にする必要があるところ、会計理論としては発生主義と現金主義とがあり税法理論としては権利確定主義と現実収入主義とがあるのであるが、所得税法ではその第10条第1項において、資産の最も通常な譲渡方法である有償譲渡の場合について、その所得の計算を収入した現金額(またはその他の財産額)ではなく、現金(またはその他の財産)を収入すべき権利の価額(債権額)によるとしていることから明らかなように、所得税法は、譲渡所得を帰属させ課税を行なうべき年度について、現金等の収入のあつた時期(いわゆる現実収入主義)ではなく、現金等を収入すべき権利の確定した時期すなわち現金等を収入すべき権利の発生した時期(いわゆる権利確定主義)をもつて帰属年度を決する基本としているのである。

高裁判例

 資産の譲渡における所得に対し所得税を課する所以は、資産の値上りによる利益を所得と観念し、所得者がその資産につき売買その他の譲渡行為をしたとき、これを契機として資産の値上りによる所得を把握し、これを課税の対象とするものであると考える。したがつて、課税の対象たる譲渡所得は、資産を譲渡しその対価を取得することによつて発生するものでなく、資産の値上りという形で既に発生しているものであり、このいわば潜在的な所得が譲渡行為によつて顕在化したときに、課税の対象たる譲渡所得として把握されるものであると考える。譲渡所得の本質はこのように理解される。そうすると、譲渡所得の発生には、現実に譲渡の対価を取得したか否かを問わないものということができる。そして、通常の例である資産の有償譲渡についていえば、所得税法の前示規定は、金銭収入だけでなく権利による収入をも「収入すべき金額」に含んでいることから明らかなように、譲渡の対価(これは金銭である)を現実に取得したときでなく、譲渡の対価を取得しうる権利(これは代金債権である)を取得したときをもつて譲渡所得発生の時としているものと解される(この規定は、前述の譲渡所得の本質に立脚しているものと理解される)。ところで右にいう「譲渡の対価を取得しうる権利の取得」は確定的でなければならないと考えられる。何故なら、右の権利の取得が確定的でなければ、譲渡所得があるものとして課税するに適しないからである。したがつて、所得税法第10条第1項の「収入すべき金額」とは「収入する権利の確定した金額」をいうものと解すべきであり、前示基本通達の見解は正当として是認することができる。なお、権利確定の時期については、事案に即し具体的に判定すべきものと解する。以上の理由にもとづき、資産の売買の場合における「収入すべき金額」は、履行期の如何にかかわらず(ただし権利の確定を要する)売買代金額をいうものと解すべきであり、右権利確定の時期を基準として譲渡所得の帰属年度を決すべきものと解する。

最高裁判例

 一般に、譲渡所得に対する課税は、資産の値上りによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として、その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会に、これを清算して課税する趣旨のものと解すべきであることは、当裁判所の判例とするところである(昭和41年(行ツ)第8号昭和43年10月31日第一小法廷判決・裁判集民事92号797頁)。したがつて、譲渡所得の発生には、必ずしも当該譲渡が有償であることを要せず、昭和40年法律第33号による改正前の旧所得税法(昭和22年法律第27号)においては、資産の譲渡が有償であるときは同法9条1項8号、無償であるときは同法5条の2が適用されることとなるのであるが、前述のように、年々に蓄積された当該資産の増加益が所有者の支配を離れる機会に一挙に実現したものとみる建前から、累進税率のもとにおける租税負担が大となるので、法は、その軽減を図る目的で、同法9条1項8号の規定により計算した金額の合計金額から15万円を控除した金額の10分の5に相当する金額をもつて課税標準とした(同条1項)のである。
 以上のような譲渡所得に対する課税制度の本旨に照らして考察すると、所論のように、代金の支払方法が長期にわたる割賦弁済によるときは、特定の年度に集中して課税することなく、割賦金の支払またはその弁済期毎にその都度資産の譲渡があるとみて、当該弁済期等の属する年度毎に個別的に課税すべきであるとする見解は、とうてい採用し難いのである。もつとも、割賦払いの期間が長期にわたるときは、売主は、初年度において現実に入手した代金額が過少であるにもかかわらず、より多額の納税を一時的に必要とすることになるわけで、これはもとより好ましいことではないが、前述のように、年々に蓄積された増加益が一挙に実現したものとみる制度の建前からして、やむをえないところといわなければならない。
 2、ところで、現行の所得税法(昭和40年法律第33号)においては、たな卸資産の割賦販売または延払条件付販売にかかる収入金額等の帰属の時期につき、一定の要件のもとに特例を認める規定(65条、66条)が置かれているが、これはもとより、たな卸資産に関する特例であるのみならず、前述のように、譲渡所得が割賦払いないしその弁済期毎に発生するとみることは制度の本旨に反するものであつて、資産の譲渡につきかかる規定の類推適用を認めることはできず、増加益が一挙に実現したとみることによる納税の困難は、徴税当局との関係において、事実上の徴収の猶予等、納付方法の緩和によるほかないというに帰着する(所得税法132条参照)。

 (資料)

原審 昭和38ネ136 昭和41年7月30日 福岡高裁 高裁判例集第19巻4号364K頁

上告審 昭和41(行ツ)102 昭和47年12月26日 最高裁第三小法廷 民集第26巻10号2083頁 
     昭和41(行ツ)8 昭和43年10月31日 最高裁第一小法廷 裁判集民事92号797頁 又は 月報14巻12号1442頁 (Web資料なし)

金子宏『租税法[第11版]』弘文堂(2006)、P.225。

水野忠恒『租税法[第2版]』有斐閣(2005)、P.191。

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Coolhage
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非公開
職業:
元大学院生
自己紹介:
資産税が中心になると思います。

記事内容は随時加筆・訂正しますので、投稿日はあてになりません。

まだまだ勉強中の身で、自分の主張も180度変えたりします。ご批判をいただければ幸いです。
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