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元院生が研究過程で収集した資料の貯金箱。
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前回の長崎地裁判決について、自分なりに意見をまとめてみました。



私の結論としては、

「 相続税が課された年金受給権について所得税を課すことについて、理論上、二重課税にはあたらないと考える。被相続人が取得したなら受けたであろう雑所得課税は、相続人において課税されるべきである。よって長崎地裁の判決理由には賛成できない。

所得税法9条1項15号は、インカムゲインである相続財産の利得に相続税が課せられた以上、同じインカムゲインに対して所得税を課すのは二重課税にあたり、課税が適当でないという趣旨によるものである。
ところが、相続税が課せられた年金受給権については、支払った保険料と受けとった年金の差額相当額に対する利得(キャピタルゲイン?)については何ら課税されていないため、二重課税にはならない。

(判決理由の二重課税論議は、先祖代々から受け継いだ土地を相続したときに相続税が課され、その土地を譲渡したときに、また譲渡所得課税がされるのは二重課税だと主張するようなもので、インカムゲイン課税とキャピタルゲイン課税を混同していることに起因する。)

しかしながら、キャピタルゲイン課税の繰延べを規定したと思われる所得税法60条1項は、資産の譲渡における事業所得、譲渡所得、山林所得又は雑所得に係るものに限定しており、雑所得とされる年金の受取が「資産の譲渡」に該当しない限り、60条1項のキャピタルゲイン繰延べの対象にはならない。

課税庁は、この所得税60条1項を準用し、先ほどの土地の譲渡所得の例と同様、受け取った年金額から、"被相続人が"支払った保険料を控除した差額を雑所得として課税したが、そのような課税繰延べを規定した法律は、所得税法60条1項以外にはないところ、その60条1項は、資産の譲渡に限定されているため、年金の受給はこれにあたらない。

一方、所得税法9条1項15号では、みなし相続財産を含め、非課税となる相続財産をなんら限定していない。

つまり、理論上課税されるべきとは言っても、課税する根拠となる法律が存在しない。

よって、租税法律主義のもとでは、理論や常識をもって法律に定めのない課税をすることは許されない。

包括所得課税を根拠に課税するとすれば、年金受取額の相続時における現在価値と、実際の受取額との差額に対して課税するしかない。 」


ということで、これは控訴審においても納税者の勝訴まちがいなし。課税庁側は、立法によって対処すべし。

同様のブラックホールは、実は一時払いの生命保険金や退職手当金にもあるのですが、現金の取得と同時に相続税が課せられているので、一見、運用益に対して課税されていないことに気がついていない。だからこそ逆に、上記の土地の例で、相続税と譲渡所得税が二重に課されるように思えてしまうのだと思います。
しかも、生命保険金や退職手当金には、相続税においても非課税措置が講じられているため、私の意見が正しいのであれば二重に課税減免されている有利な所得という考えもできます。
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記事内容は随時加筆・訂正しますので、投稿日はあてになりません。

まだまだ勉強中の身で、自分の主張も180度変えたりします。ご批判をいただければ幸いです。
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